私たちは、とても便利な世界に生きている。野菜や魚は近所のスーパーに行けば売っている。ドラマも映画もiPhoneで見れて、なんならウーバーで注文すれば自宅から一歩も出ずに生活が可能になった。でもね。それでいいの?山田孝之さんは畑の土を耕し、種をまき、魚を釣り、そこから得た知識をシェアしながら、原始的な営みを取り戻そうとしているのです。なぜなら「生きる力を身につけたい」というシンプルな理由なのです。それが「原点回帰」なのです。
原点回帰 山田孝之、新しいコミュニティをつくる [ 秋吉健太 ]
生きる力とつながる力を実践的に学んでいく
社会の変化が加速する今、私たちは自分が何者で、どこへ向かうのかを見失っていませんか?インターネットが発達し、SNSを通じて多くの人とは繋がっているようにも見えるが、実際はリアルな関係性が希薄になっていないか?そして、本当に頼れる存在が誰なのか分からなくなっている人も多いのではないだろうか。そんな中で「原点回帰」が気づいたのは、「目的や課題を共有する仲間の集まり」だった。そこでは、メンバーひとりひとりが持つ自分のスキルや経験が活かされ。無農薬農法などの活動を通じて、生きる力とつながる力を実践的に学んでいく。たんなる趣味の共同体ではなく、人と人とが本気で向き合い、支え合いながら進む、もう一つの生き方なのだ。
「いただきます」の本当の意味
「いただきます」という言葉が大好きと山田孝之さんはいう。食べ物が目の前にあるとすると、そこに至るまでに、育ってくれた農作物があって、それを作った方、レストランだったら運んでくれた方、調理してくれる人がいる。それらすべてに対して「いただきます」と言っている。そのことをもっと身近に感じたり、もっと意味を知りたい。それには自分で野菜を作ってもっとちゃんと、「いただきます」の意味を自分でしっかりと感じたいと思うのです。
生きるために必要なこと
「生きるために何が必用なんだろう」と考えると、余計なものを引いていったら食べ物と雨風を防げる住居さえあれば、人は生きていけるんじゃないかと思ったんです。だからまず始めに、食べ物を自分の力でちゃんと作ろうと考えました。そこで、農業を学ぶために長崎や高知、埼玉などを巡り、自分が理想とする自然農法を実践している先駆者・達人の元を訪ね歩いたんです。
原点回帰 山田孝之、新しいコミュニティをつくる [ 秋吉健太 ]
最終的な目標は「理想の島を探すこと」なんだそうです。その島作りのために様々なことを学び、実践していくこと。その学んだことを活動に共感した「原点回帰」のメンバーにシェアする。そしてみんなが助けあう。この本を読んで思ったのは一昔前には当たり前にあったことなのではないでしょうか。必要な野菜と交換しあったり、稲刈りはご近所さんとの共同作業だった。そう、農業は一人ではできないんです。みんなの協力が必用なんです。

