日本人が知らない、日本人の知恵

知識が広がる本

春夏秋冬という明確な四季により自然の変化に富んだ美しい国、日本。けれども人間が住むには、乾燥した冷たい風が吹く冬や気温も湿度も高い夏、台風や地震にも対応しなくてはいけません。われわれの祖先が積み重ねてきた驚くべき発明と工夫が、本書では満載されています。

梅干と日本刀(日本人の知恵と独創の歴史) (祥伝社新書) [ 樋口 清之 ]

水圧を見事に殺す、釜無川の信玄堤

日本は雨が多く、大水が出ると必ず川が氾濫します。そのため高度な築堤技術が発達しました。その土木技術をもっとも精巧に利用したのが、武田信玄の「信玄堤」です。釜無川はたえず氾濫し、鉄砲水により恐ろしく水圧が高いため、自然の岸壁にぶつけて水流の勢いを削いでから南に流しました。次に水位上昇に備えて、わざと防波堤を切り遊水を流す仕組みです。計り知れない自然エネルギーに逆らわず、分散することでエネルギー殺した氾濫防止法なのです。

西洋人にも真似ができなかった日本刀

鎖国を解いて、日本の文化が世界に紹介され、西洋人が驚嘆したものの中に刀の技法がありました。当然、日本刀を持ち帰り鉄の成分などはわかったが、同じものを作ることはできませんでした。鉄の溶解点は千八百度ですが、日本には約千八百度の高温が出せるコークスがなかった。木炭は酸素を供給しても千二百度が限度のため半溶解の不純物が含まれたアメ状の鉄しか得られず、そのままでは炭素が含まれるため固いけどもろい。柔軟性を持たせるために均質に叩いて不純物を放出し日本刀の芯ができる。その後幾度となく熟練の工程と工夫を繰り返し、固さとやわらかさという二つの相反する性質を持つ刀が生まれました。

ごはんとおかずの関係

日本では米を主食としてカロリーの摂取源としたが、酸性食品でありさまざまな欠点を持っています。その欠点を補うために副食として摂取する。外国人の方は食生活に主食と副食という概念を持っていません。すべての食品から満遍なくカロリーや栄養を摂るという考え方です。カロリー源は安くて胃に負担のかけないお米にまかせ、一方で米の吸収を早めるアルカリ食品を少量、さらにミネラル、ビタミン類を補給する食品を摂取する日本人の「ごはんとおかず」方式は見事に合理的な食事法です。

自然をよく観察し、台風、地震などの脅威に逆らわず、被害を最小限に留める工夫をして生きてきた日本。飢饉に備えて建築の材料も食材に使用したアイデアなど、びっくりする内容も掲載しています。海外から入ってきたものも日本に入ってくると古来のものと融合して新しいものにしてしまう知恵。改めてすごい国だと実感しました。

<目次>
1章 日本には古来、すごい「科学」があった
2章 驚くべき、「自然順応」の知恵
3章 日本人は「独創性」に富んでいる
4章 住みよい「人間関係」を作った日本人

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