自分が発する言葉は人生を左右する力があります。積極的な言葉を表現した場合は良い状態になり現れ、消極的な怒り、悲しみ、などが口に出される場合は悪い結果を与えます。それは言葉の良し悪しにより、潜在意識にも影響があるからです。
中村天風の生きた環境
幼少期は激しい負けず嫌いで、喧嘩をすると相手の指をへし折るほどの徹底ぶり。日露戦争には諜報員として満州の野で死線をかいくぐり、奔馬性結核で死に魅入られた。病状は好転せず、救いを求めてアメリカの哲学者に会うも成果はなく、医学を学んでも結核は治らなかった。その後、ヨーロッパの哲学者、宗教家を訪ねても得られなかった人生の意味。望みを絶たれ失意のどん底、諦めて日本に帰る途中、偶然出会ったヒマラヤのヨガの聖者に導きかれ、心的訓練をし聖なる体験をする。肺患の青年は中村天風に飛躍し真理を悟り、結核を克服しました。
哲学とは原因を探る学問
哲学とは我々が今見るところのもの、すなわち、現象を遡りその原因を探る学問です。たとえば、抽象的な漠然としたものを「神だ」「仏だ」と思っているが、「神や仏とはどんなものか?」と聞かれたら、なんと説明するか。見たことも聞いたこともないものに、説明を与えられるはずはない。なんとなく安心ができるといったことや、信仰を気高いと感じるというようなことではないだろうか。信仰という名前だけで、その人たちは相変わらず、怒ったり、悲しんだり、恐れたりということを繰り返している。
思考によってのみ「心」の活動は行われる
我々の生命の中にある肉体はもちろん、精神生命も、一切の広い意味における人生の事柄を心の運用いかんによって、決定することができる。心の運用を良くしたり、悪くしたりすることによって、人間の人生は良くもなり、悪くもなる。
中村天風は普通の領域を超えている
人は、自分の体験と学問の範囲でものをいいます。範囲を超えたことに遭遇すると人はうそ(否定)、ほんと?(疑惑)、信じられない(不信)と、拒絶的態度にでます。私が最初にこの本を読んだ時に感じたのは、「ほんとに?」でしたが、よく考えると気持ちのよいほど真理を伝えています。インドで与えられた問題は、たとえば「心とは何だ?現在の心はお前の本当の心か」「人間とは何だ」という一つの事柄を3月や半年は考えていくというものだった。
悟りとは真理を感じた時の心の状態
真理を自分の努力で自分の心で感じるのも、人の悟りを耳から聞いて自分の心に受け入れるのも、受け入れ方に相違があるだけで結果は同じであると中村天風は語っています。この本の真理を、自分の心を通りすぎてしまわないように留めることで、よい運命を拓くことができると感じました。
<目次>
序章 朝旦偈辞
第一章 生命の力
第二章 人生を支配する法則
第三章 潜在意識とその性能
第四章 言葉と人生
第五章 大いなる悟り
第六章 人生と運命
第七章 人間の生命の本来の面目
第八章 人生の羅針盤
第九章 第一義的な生き方
第十章 恐怖への戒め
第十一章 勇気と不運撃退
第十二章 理想と想像
第十三章 一念不動