「言志四録」は、西郷隆盛や吉田松陰、坂本龍馬らが心酔した書で、昌平坂学問所の塾長を務めた儒学者の佐藤一斎(1772~1859)が40年あまりにわたって書いた語録です。江戸時代後期に書かれた「言志四録」は、幕末から明治にかけて多くの日本人の座右の書となりました。そこには、生きていく上で必要な事柄が、心に響く短い言葉で的確に表現されています。
西郷隆盛の座右の書
西郷隆盛は「言志四録」を座右の書として逆境の中で書き写し、肝に銘ずるように大切にしました。特に自分の心に響いた言葉を抜き書きし、それは「手抄 言志録」として残っているほどです。座右の銘にしたくなる切れ味鋭い言葉もさることながら、仕事や人付き合い、リーダーの心得など、今を生きる私たちの支えになることが非常に多いです。
佐藤一斎は「陽朱陰王」と呼ばれた
佐藤一斎の専門は朱子学ですが、より実用的な陽明学まで広く及んでいました。そのため、「表立っては朱子学を、その裏では陽明学を知り尽くした王」という意味の「陽朱陰王」と呼ばれていました。「論語」と違って「言志四録」は、それほどたくさん解説本が出ていませんが、実用的で実際の生活の中でもスッと心に響く言葉が多く感じられます。
幅広い見識と実用的なアドバイス
「博聞強記は聡明の横なり。精義入神は聡明の竪なり。」
・何でも広く聞いて覚えておくのは、聡明の横幅である。また、深く物事を考え抜くのは、聡明の奥行きである。
「必ずしも福を干めず。渦無きを以て福と為す。」
・わざわざ幸せを求める必要はない。災い冴えなければ幸せだ。
「口を以て己の行いを謗ること勿れ。」
・自分の口で自分の行いを悪く言うものではない。
佐藤一斎はどんなときでも「自分で決める」ことを大切にしていました。自分の人生に責任を持つということは、結果がどうであれ、他人のせいにすることなく、自分のこととして解決できる。どんな状況になってもへこむことなく、嵐がおさまるのを待って動き出すようにと、繰り返し言っています。
私たちは悪い状況になると、そこから逃れたくてつい無駄な動きをしてしまいがちです。しかし、それは大きな間違いで、動くと事態はかえって悪化すること多いものです。長い人生、自分の思うようにならないときは多々ありますが、そんなときこそ、「言志四録」を読んでみてください。たとえば、辛いな〜と思っていても、「大きな禍がなければ、それで十分幸せだ」と説いており、心が楽になります。
<目次>
第1章 結果を出すには働き方を変えるー仕事力
第2章 考えて動けるチームを作るーリーダー力
第3章 学びを無駄にしないー学習力
第4章 人とのちょうどいい距離感ー人間関係力
第5章 悔いのない生き方ー人生力