ある著名な経営者が「ホテルはドラえもんなんだよ」と言っていましたが、まさにその通りかもしれません。ホテルは歴史、建築、デザイン、食、アート、文化、ヒト、IT、法律などさまざまなものが複雑に絡み合い成り立っています。そんなホテルのビジネスユーザーからホテルマニアまで、ホテルの教養について楽しく、そしてわかりやすく解説しています。
ホテルと旅館の違い
区分には3つの側面があります。一つ目は旅館業法上の区分、二つ目は接客・サービス上の区分、三つ目は食事。その中でも旅館を象徴するのが、お部屋係(お世話スタッフ)と呼ばれる「中居さん」の存在です。中居のおもてなしが旅館の評判を左右するとも言われています。次が食事で、多くの旅館では食事代込み(一泊2食付き)の設定となっています。ですが、最近は素泊まりの宿泊サービスも増え、旅館業法も2013年に「旅館・ホテル営業」に統合されました。今後は旅館とホテルの区別がしづらくなっていくかもしれません。
日本三大ホテル
日本のホテル史において重要な役割を果たしたのが、①帝国ホテル、②ホテルニューオータニ、③ホテルオークラ(現・The Okura Tokyo)です。帝国ホテルは各国の要人や世界のセレブに愛好家は多く、近代建築の三代巨匠でもある、フランク・ロイド・ライトによる建築です。日本初のバイキングレストランも帝国ホテルが発祥です。北欧の伝統的な食事スタイルを取り入れたのが始まりで、定額で高級フランス料理が食べ放題となり評判となりました。ホテルニューオータニでは、かつては敷居の高いホテルを「家族団欒から国際会議まで」をうたい、幅広いマーケットに対応、5つ星ホテルとして世界に認められました。The Okura Tokyoは「建築やインテリアに日本美術の枠を集め、日本ならではの国際的なホテルを作る」という構想をもとに建てられました。ロビー空間は圧倒的な存在感を放っています。
世界と戦う、星野リゾート
星野リゾートは「フラットな組織文化」に特徴があり、「サービスを提供する社員一人一人が、自ら発想し、判断することを通じて仕事を楽しむこと」が重要だと捉えています。星野リゾートのビジョンは、「世界に通用するホテル運営会社になること」です。そのために価値観を明文化し、スタッフが共有することで、自由な発想と自らの判断で行動することができるのです。
<レビュー>
ホテルの収益源は宿泊サービスが中心でしたが、社会の変化に伴いその状態は大きく変わりつつあります。とくにコロナ禍の影響は多大でした。生き残っていくためには、変化に適応し、新しいニーズに対応していくことが必要です。未来のホテルは従来のホテルとは大きく異なる姿になるかもしれません。さまざまなニーズに対応するための工夫や新しい技術革新により変化するホテルのあり方は、泊まる側からしても楽しみです。この本を読んで、一度は泊まってみたいホテルが増えました。