モノをより細かく分けていく「分割の物理学」が発見した「素粒子」。その素粒子が組み上げられてどのようにしてモノはつくりあげられていったのか。それを究めるのが「組立の物理学」で、まだ多くの謎が残されています。そんな物理学を始めての人でもわかりやくす数式を使わずに解説しています。ミクロの世界を体験してみてください。
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宇宙のあらゆるモノが、原子を材料につくられている・・
ところが、原子の性質や化学反応の研究が進み、いよいよ原子こそが基本物質だという考えに落ち着いたところで、そのなかからエックス線やガンマ線、マイナスの電気を帯びた電子などが飛び出してくることがわかってしまいました。つまり、原子はまだ「分割できないモノ」の最小単位ではないになります。20世紀になって原子が電子と原子核でできていることがわかり、さらにその原子核もまた分割できるモノで、陽子と中性子という粒子の集まりであることが明らかになりました。
21世紀の現在、究極の物質は
さらに、陽子や中性子もまた分割できる物質で、クォークが集まってできていることがわかりました。これ以上分割はできないだろうと紀元前から考えつづけてきた「モノの基本は何か」という問いの、クォークがおそらく最終的な答えです。それ以上分割できない粒子のことを、すべての物質の素という意味で「素粒子」と呼んでいます。クォークは、もちろん素粒子。ただし、クォーク意外にも素粒子はあり、電子もそれ以上分割できない粒子であり、光の粒子の光子も素粒子です。ですので、宇宙のあらゆるモノは、それら何種類かの素粒子を材料にしてできているのですが、クォークはそのなかにあって、モノが組み上げられていくうえで基本の出発点となる物質です。
でも、誰も見たことがない
クォーク1個だけを陽子や中性子の中から取り出すのは、今でも不可能のため、誰も見たことはありません。ですが、電子をぶつけると、陽子のなかにどうやら粒らしきものがあるのがわかったり、ある種のクォークを含む複合粒子が生成されたり、といった実験結果により、確かにクォークは実在するものであることが裏付けられています。物理の世界では説明のできないことをなんとか説明しようとする「仮説」があり、のちに体系づけられた「理論」となることが、一般的な流れとなります。
一周3.8kmという巨大な加速器を使い原子核と原子核をぶつけて壊し、なかにある陽子や中性子もついでに壊し、さらになかにあるクオークを飛び出させようという実験を行われました。原子核が壊れ、陽子や中性子も壊れ、なかの粒子が飛び散る衝突点にほんの一瞬立ち現れたのは、宇宙誕生後、たった100万分の1秒後。そこはどろどろとしたクォークでできた「スープ」とでもいうべき宇宙だったのです。約5兆度の超高温、超高密度の宇宙のなかのクォークたちは、わたしたちが想像していたよりもはるかに不自由な動きで、液状になってうごめいていたのです。ここでも仮説していたものとは、大きく違う実験結果になったのです。この本では初期の宇宙を見た体験をもとに、創成期の謎をひもといていきます。
<目次>
1 100万分の1秒後 どろどろしたスープの宇宙
2 100万分の1秒前 すべてのエネルギーは一点に
3 1万分の1秒後 3つ集まったら100倍の重さになった
4 3分後 すべてのモノはラクをしたがる
5 38万年後 そして宇宙は晴れ上がった
6 4億年後 星の中で変身