新しいことへの挑戦の道

知識が広がる本

研究をしていると、多くの失敗があり、わからないことがたくさんあります。しかし必ず成功するはずだと信じて、一生懸命努力することです。研究するときは、人のまねを絶対にしないと自分に言い聞かせ挑戦してきました。すると応援してくれる人も出てきて、いい結果につながるんです。

大村智ものがたり 苦しい道こそ楽しい人生 [ 馬場錬成 ]

身近な土の微生物が世界を救ったのです

土の中には、たくさんの微生物がいます。小さなスプーン1杯の土の中に、目に見えない微生物が1億個も生きています。地球上の微生物は、30億年前からいますが、人間の歴史は数十万年前からです。微生物の方が人間よりもずっと大昔から地球にいる先輩の生物なのです。その中のある微生物が作ってくれた化学物質が特効薬となりました。その土は、静岡県伊東市川奈のゴルフ場の近くから取った土でした。

熱帯地方には、重い病気がたくさんあります

小さな寄生虫が引き起こすオンコセルカ症は、河川に生息するブユにかまれると寄生虫が目に入り込んで盲目になる大変恐ろしい病気です。この病気にかからない薬を開発して、アメリカのメルク社のウイリアム・キャンベル博士と共同でノーベル賞をいただきました。この薬は、1年間に2億人以上の人々に飲んでもらい、オンコセルカ症にかからないようにしてきました。この薬は微生物の力を借りてできたものです。

農作業と化学の実験は似ている

少年時代、農作業を手伝ったことで稲や野菜の育て方を自然と覚え、家畜動物の育て方などもわかるようになりました。知らないうちに農業だけでなくいろいろな自然現象についての知識が身についていきました。農作業でやっていることは、化学の実験をやるときや作業の計画を立てることとよく似ているところがあります。どちらも将来のことを考えて計画をたてないと、うまくいきません。何かあったときにはすぐに予定を変更することは農業も同じで、農民は科学者であると思うことがあります。

大学時代に「伝説のスキーヤー」と言われていた横山先生に「勝つためには、人から教えてもらったことだけをやるのではなく、さらに自分たちで技術を研究することが大事。レベルの低い人のまねをしても、その人と同じであり、その人を超えることはできない」それまでの世界中の大学や企業研究は、主に人間に役立つ薬の開発を目指していました。しかし大村さんは動物用の薬ならライバルが少ないと考え、共同開発することになりました。そこからも研究室閉鎖の危機など苦しい道のりを乗り越えて、世界が驚いた動物に1回使用するだけで寄生虫やダニを退治するエバーメクチンの薬を開発。その後、人間用に改良を重ねたイベルメクチンはアフリカ地方の重い熱帯病として恐れられていたオンコセルカ症の予防に貢献しました。

<目次>
第1章 「自然が友達」の子ども時代
第2章 人との出会いで道がひらける
第3章 「人の役に立つ仕事をしよう!」
第4章 ついに発見!2億人を救う化学物質

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