この本は東日本大震災の教訓から、正しい地震の知識を知ることで、少しでも被害を減らすことを目的に書かれています。著者はベストセラー『キッパリ!』の上大岡トメさんが地震に対する素朴な疑問を、京都大学大学院理学研究科准教授・地震学のアネ(姉)が答えるという内容。地震についての基礎知識がマンガも交えながら、小学生でもわかりやすく解説しています。
「知識」で地震に備える
防災も耐震も大事ですが、「知識」は大きな備えになります。日本は世界の陸地の0.3%にも満たないのにプレートによる境界が密集し、世界の地震の10%が日本の周辺で発生しています。プレートは三陸の場合、年に8〜9cmぐらい。何十年や何百年という周期で考えるととてつもないエネルギーとなります。そのため、楽観も悲観もしない、正しく地震を恐ることが重要です。
地震の予知はできるのか?
今は地震の「予知」という言葉は、兵庫県南部地震の前ほど使っていません。予知するってどういうことかというと、地震が起こる前に、地震の起こる場所、地震が起こる時期、それから地震の規模、マグネチュードなど、それらを予測すること。天気予報のように「明日地震が起きますよ」というような時間軸では予測できていません。「何十年〜何百年ぐらいの間に来るかも」とうスケールなので、「長期予測」「長期評価」という言葉を使っています。
地震計の設置はたったの100年前
地震がおこると「いついつ、どこどこで地震が起きました」とわかりますが、なぜわかるのかというと、地震計という観測機器が日本各地に置いてあり、観測した地面の揺れの記録を使って「どこどこで地震がありました」とわかります。その地震計は100年くらい前に設置されたので、その前の情報はわからないことが多い。地震の周期は数十年から数百年ぐらいのため、古い地震の記録は、古文書などの地震・津波がありましたという情報をもとに予測をしているのが現状です。
気象庁の津波警報は、地震が起こったあと、平均3分ででます。世界でも最先端。それを聞いたらすぐに高台などに逃げること。警報の言っている津波の予想の高さを鵜呑みにしてはいけません。北海道南西沖地震の時は4〜5分で大津波が来てしまいました。今回の東日本大震災では問題も明らかになりました。地震発生から3分で大津波警報は出たけど「岩手県で予想される津波の高さは3m」だったので、防波堤があるし大丈夫と思って避難しなかった人も少なくなかった。どうして小さく予測が出たのかというと、400〜500キロという大きな断層がずれて起こったため、断層全体がずれ終わるまでに3分かかった。3分で警報を出すには一部分の情報しかないので、小さく推定されてしまいました。原理を知ると地震速報も万能ではないことがわかります。
<目次>
一章 地震の予知はできないの?
二章 津波が起きるワケ
三章 プレートが動くワケ
四章 地震がおきるワケ
五章 これからどうする?