続けることが事を成就させる道

知識が広がる本

2024年致知5月号
<特集 倦まず弛まずより>
一流の人は皆、生涯を捲まず、弛まずの姿勢を貫いた人
「倦まず」は「飽きない」、「弛まず」は「心を緩めない」ということである。一つのことを始めたら途中でいやになって投げ出したりしない。孜々として努力を続ける。人間の心が陥りやすい通弊を戒めた言葉と言えます。「論語」の子路編にも有名な言葉があります。
子路 政を問う 
子曰く 之に先んじ之を労す(先之労之)
益を請う 捲むことなかれ(無捲)
弟子の子路が政治の心得を尋ねた。孔子が「皆より先に苦労をし、皆をねぎらってやることだ」と答えた。この答えに満足しなかった子路が「もっと他にありませんか」と聞くと、孔子はこう言った。「無捲ー飽きることなく続けることだ」

<人類の未来を拓くより>
北尾吉孝氏 小林久隆氏 対談
「有志竟成」「澹泊明志」
北尾 私が投資するか否かを判断する際に最も大事にしているのはやはり品格です。この人は信用できるか、本気かどうか、志があるか、私利私欲のためじゃないか。その点、小林先生はまさしく志の人でした。「志ある者、事竟に成る(後漢書)」にもありますが、先生は人類をガンから救うという志を持ってやられている。諸葛孔明も息子に宛てた手紙に「澹泊(たんぱく)に非ざれば以て志を明らかにするなし」私利私欲にこだわらず、さっぱりとした淡白な人柄でなければ、志を果たすことはできない。志というのは壊れやすいから、それを常に明らかにするには私利私欲を捨てることが大事だと言っています。

がん細胞をだけを破壊する
小林 光免疫療法は正常な部分をほとんど傷つけず、光を使ってがん細胞だけを壊します。その鍵を握るのがIR700という化学物質と近赤外線です。がん細胞の表面には他の正常細胞にはない特有のタンパク質(がん抗原)が数多く存在します。そのがん抗原とするタンパク質(抗体)にIR700を点滴で投与し、体内のがん細胞と結合させ、直径一ミリの光ファイバーを患部に差し込み、近赤外線を数分間照射します。するとIR700が化学反応を起こし、結合している抗体の形状を物理的に変化させることでがん細胞の細胞膜に無数の穴が開き、がん細胞が内部破裂していきます。要するに、がん細胞に無数のダイナマイトを仕掛け、近赤外線の光エネルギーで起爆スイッチをオンにし、がん細胞を破壊するという仕組みなんです。

小林 さらにがん細胞が死んだという情報が免疫システムに伝わると、周辺の免疫細胞が活性化し、壊れたがん細胞の中身をパクパクと食べるように消化・分解し始め、がん細胞の情報を取り込みます。それにより、捉え損ねた微小ながん細胞や転移がん、今後生まれてくるがん細胞をも攻撃することができます。要するに、敵(がん細胞)を減らして味方(免疫細胞)を増やせば勝てるのです。従来の三大医療は敵を減らすのと同時に味方も減らしていました。免疫療法は味方を増やす治療ですが、敵を減らすことはできない。光免疫療法は、敵を減らして味方を増やす。従来とは全く一線を画す治療法なのです。

<いまも料理が恋人より>
道場六三郎氏
陰日向なく自己修養を積み重ねる
後輩には何をやるにしても、基本を身につけなくてはダメだと伝えています。例えば野菜を茹でる時にこれだけあれば充分足りるのに、何気なく必要以上の水を鍋に入れてしまう。何事にも適量がある。ちょっとした差でも水は損をするし、ガスは損するし、時間も損をする。冷蔵庫の中は綺麗に整理し、どこに何が入っているか覚えて、開けたらすぐに欲しいものをとりだせるようにしておく。調理台が汚れたら布巾でサッと拭き、パッと畳んで置く。そういう些細な所作の機敏さ、美しさが大事なんです。礼節や立ち居振舞い、仕事に取り組む姿勢、そういう一つひとつを身につけなくてはいけない。陰日向なく自己修養を積み重ねることがやっぱり大切なんです。

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