論理こそ数学の命である

知識が広がる本

資源が少ない日本がともかく生きていくためには、特に優秀な労働者、技術者、経営者を育成するしかない。科学技術の根本は数学であることはもちろん、労働者も経営者も、最新の技術に追いつき、使いこなすためには数学を自由自在にしておく必要があります。この本では数学の生まれた“歴史の神秘”を知ることで興味をもってもらい、数学がもっと好きになることを目的にしています。

数学嫌いな人のための数学 数学原論【電子書籍】[ 小室直樹 ]

<はじめにより>
数学を好きになるだけで、大変な収穫がある
もし、“数覚”(数学的真理を感得する知覚)があれば、数学者に。数学の論理が分かれば、日本経済も指導できるでしょう。日本の未来のためには、数学を好きな人が増え、縦横無尽に使いこなせる人たちが必要です。しかし、文部省が推進してきたゆとり教育の結果「分数ができない大学生(岡部恒治ほか著)」等が続出してしまいました。

数学は神の教え(神の論理)である
なんていえば、仰天することでしょう。だが、“歴史の神秘”を見抜けば理解できます。数学が成長して諸科学の根本になれたのは、ギリシャの形式論理学と結合したからですが、形式論理学の堅苦しさは、人を後込みさせました。人の後込みを押し切ったのが、イスラエルの神であった。イスラエルの神は、唯一絶対の人格神である。この神にとって、一番大切なことは、神が存在することを人に知らせること。神の存在問題がギリシャ数学が解決できなかった解法の存在問題へと収束していくことで、数学の論理は成立しました。

数学の論理は明快である
第一章では歴史的説明、第二章はアリストテレスの形式論理学、第三章は数学と近代資本主義、第四章は数学とは絶大な威力があることを念押しし、第五章は経済学の極意を解説しています。数学は近代経済学を学び、資本主義社会を生き抜くために、ますます必要な学問なのです。特に資本主義の所有の本質について、偉い役人である高級官僚には徹底的に理解してもらわないと、資本主義は滅びてしまいます。

<レビュー>
数学を勉強することの意義は「論理的な思考力を身につけるため」であるという。実は「論理」こそ数学にとって生命なのです。そして「論理」とは論争のための方法のことを指します。では、一体だれと論争するのか。人と人との論争と思われるだろうが、究極的には神と人との論争なのです。本来の論理とは「正しいか」「正しくないか」、つまり真か偽かがキチンと決まることであり、第三のこと(中間)はあり得ない(排中律)のです。これが形式論理学の基本法則であり、数学が本来の論理のみを使用した学問に成長したことは画期的なことでした。
この本の内容は数学に留まらずイスラム教から法律、資本主義に至るまで幅広い内容で著者も読者に数学が好きになるよう苦心惨憺したと書かれています。歴史や経済から数学との接点に繋がっていくのを感じると思います。

<目次>
第一章 数学の論理の源泉──古代宗教から生まれた数学の論理
第二章 数学は何のために学ぶのか──論理とは神への論争の技術なり
第三章 数学と近代資本主義──数学の論理から資本主義は育った
第四章 証明の技術──背理法・帰納法・必要十分条件・対偶の徹底解明
第五章 数学と経済学──経済理論を貫く数学の論理

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