ものが売れないと悩んでいる会社に一読あれ

知識が広がる本

デザインの力を使ってブランドの力を引き出し、商品を「売る」のではなく「売れる」ように仕向けるのがブランディングデザインです。これは、どんな仕事についたとしても、売り上げを伸ばしたり、知名度を上げたり、イメージをアップさせたりする必要性は必ずついてまわります。利益を追求していないNPOや行政でもそこは同じです。どうやって自分たちの考え方を世の中に伝えていくのかを解説します。

「売る」から、「売れる」へ。 水野学のブランディングデザイン講義 [ 水野学 ]


商品が選ばれづらい時代
戦後は世の中に不便がたくさんあり、技術もどんどん発展していました。新しい商品は消費者にとって必要だと思ってもらいやすかった。現在はグローバル化の進行やITの登場により競争相手が国内だけではなく、世界まで広がっていきました。要するに安くてすぐれた商品は、今では山のように存在します。まさに飽和状態であり、消費者は機能やスペックで商品を選ぶのがわかりづらくなっていきました。今だに「いいものをつくれば売れるはずだ」というものづくり信仰がありますが、差がわかりにくいのです。

ブランドをつくるには
たとえば、腕時計は時間がわかるという基本的な機能は、100円ショップで売っている商品でも十分です。だからといって、ロレックスの時計も売れないわけではありません。ブランド力によって、使っている素材が高価という理由もありますが、そのコスト差をはるかに超えた価値を生み出しています。消費者は「あの企業のものなら」「あのブランドなら」と共感して、商品を買おうとしてくれるのです。決して高級ブランドのようなものだけを意味しているわけではありません。どうやってブランドを構築していくのかというと、商品そのものだったり、パッケージデザインであったり、広告であったり、店舗の空間デザインであったりといった、その企業のアウトプットでかたちづくっているのです。

ブランドとは「見え方のコントロール」である
志の高い理念を掲げても、それを説明するウェイブサイトのデザインが品位を疑うようなものだったら理解してもらえません。清潔さが問われる商品の経営者が、だらしない服装で取材に応えていたら、商品に疑いをもたれてしまうかもしれない。例えばアップルは「商品がかっこいい」ということもありますが、あらゆるアウトプットがかっこいい。アップルストアの建物もかっこいいし、ウェイブサイトも商品の梱包もかっこいい。美意識の高さやクリエイティブへのこだわりというアップルのイメージが消費者にちゃんと伝わっているんです。

デザインという領域でセンスを発揮するには
センスを磨くには、「王道、定番を知る」「流行を見つける」「共通点を見つける」です。
・王道、定番だなと感じるものは何かと見極めることで、基準が見えてきます。そこをゼロポイントにすることで、ポジションづけができるようになります。企業が差別化をはかるために消費者が求めていないものをつくってしまうことも防げます。
・流行を見つけるは、雑誌など手がかりにしながらふだんからこまめにいろいろなものをチェックしておく。一過性のものもありますが、その後のジャンルで定番になることもあります。場合によってはリサーチを行いユーザーのたくさんの意見を聞くことで流行の傾向をつかみ、日常の問題も発見できます。
・共通点を見つけるは、たくさんのものを見て、そこに通底するルールを見つける。例えば店舗づくりでは、にぎわっている商業施設などに行って、高速で見てまわるとさまざまな共通点が見えてきます。床の色は暗めや天井は低いなど。そして自分なりにその理由や根拠を分析するのです。
これらの3つの方法で普段から自分で努力してたくわえることで、センスを向上させることができるようになります。

「売る」から、「売れる」へ。 水野学のブランディングデザイン講義 [ 水野学 ]

<レビュー>
この本に水野学さんが実際に「茅乃舎」にプレゼンした企画書と経緯が掲載されています。勝手にマークを提案したそうなんですが、その理由や内容は感無量です。手の内をすべて見せています。目先を変えブランドを作り上げても、最終的に商品が売れなければ意味がないと説明しています。日本にはまだまだ良い会社がたくさんあると思いますが、売り方に悩んでいる方はぜひ一読あれ。

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