イメージで投票していませんか?

歴史・哲学の本

政争に明け暮れる「政治屋」ではなく、国家と国民について真摯に考え、その利益を体現することができる「大政治家」を、私たちは選挙で選ばなくてはなりません。そのヒントがこの本にあります。

2000年前からローマの哲人は知っていた 政治家を選ぶ方法 [ キケロ ]

政治家に任せる仕組み=代議制

現代の民主主義国家では、「代議制(間接民主制)」がとられています。私たち市民は選挙で代表者(政治家)を選び、その人たちが国や地域の政治を進めていきます。そして選挙が終われば、ふだん私たちが政治に関わることはほとんどありません。「政治はプロに任せるもの」となり、市民は生活や仕事、自分の興味関心を追いかけて過ごします。

ドイツの哲学者ヘーゲルやマルクスは、現代の市民社会を「欲望の国」と呼びました。人々は政治的な関心よりも、経済的な豊かさや文化的な楽しみに重きを置くようになったという意味です。

安全や秩序が整った社会では、人はより自由に、自分の欲望を追求できる。これは現代民主主義の一つの成果でもありますが、その反面、政治に無関心になる土壌にもなっているのです。

イメージで投票する危うさと民主主義の構造的欠陥

例えば19世紀のフランスでは、貧しい人々にも選挙権がありましたが、彼らの利益を代弁する政党は存在しませんでした。そこに登場したのが、実績もないが「自分が大統領になれば国民全員を幸せにする」と主張したナポレオン3世(ナポレオンの甥)です。彼はイメージで支持を集め、大統領に当選し、最終的に皇帝として独裁を始めました。その結果、貧しい人々はより苦しい生活を強いられることになりました

これは、「国民の代表を選ぶ代議制」自体にも構造的な限界があることを示しています。なぜなら、社会には立場の違う人々(資本家・労働者・男性・女性など)がいて、すべての人に利益をもたらす政策は存在しないからです。

独裁者や官僚は、一部の利益を別の集団に付け替えることで「全体に良い政策」のように見せかけますが、これは長続きしません。

同様のことは日本の小泉政権にも見られました。「構造改革」や「新自由主義」といったキャッチーなスローガンに惹かれた中産階級の人々が、小泉首相をイメージで支持しました。しかし、その政策は中産層の生活を苦しめる結果になったのです。

キケロの言葉が今に響く理由

コロナ以降、私たちの生活や働き方は大きく変わりました。経済の停滞は長期化し、倒産する企業も増え、副業を認める企業も増加。これは裏を返せば、本業だけでは生活が成り立ちにくくなっているという現実でもあります。

さらに、格差の拡大も避けられず、多くの人が「政治に経済を何とかしてほしい」と願うようになってきました。では、その期待に応えられる「政治家」とは、どんな人なのでしょうか?

私たちが選ぶべきなのは、単なる「政治屋」ではありません。
必要なのは、経済・安全保障・社会政策を広く見渡し、専門知識を持つブレーン(官僚)を的確に使いこなせるような、「大政治家」です。

派手なスローガンやイメージではなく、真に国を預けられる人物かどうか。その見極めが、これからの時代はますます重要になります。

そんな「大政治家」の理想像のヒントをくれるのが、古代ローマの政治家・哲学者キケロです。

彼は貴族ではなく平民の出身ながら、共和政ローマの最高官職にまで上り詰め、国家の中枢で数々の問題と向き合いました。
当時のローマも、独裁の台頭、領土の拡大による移民問題、腐敗、財政の危機など、多くの困難に直面していました。これらの課題は、まさに現代の日本とも通じる問題です。

経済格差、戦争、移民、政治とカネ──それらにどう向き合い、どう導くのか。今、私たちが選ぶべき人物を考えるうえで、キケロの視点は重要な示唆を与えてくれます。

2000年前からローマの哲人は知っていた 政治家を選ぶ方法 [ キケロ ]

キケロは「混合政体」が理想的という

「混合政体」とは、君主政・貴族・民主という3つの異なる政治体制の長所をバランスよく組み合わせた制度のことです。

  • 君主政:決断力とスピード感
  • 貴族政:専門性と熟慮
  • 民主政:民意の反映と自由

これらの要素を一つの国家にうまく組み込めば、それぞれの欠点を補い合い、安定した政治が可能になるという考え方です。

単一の政治体制のリスク

歴史が示すとおり、一つの体制に偏ると、それは劣化しやすい傾向があります。

  • 君主政 → 独裁・暴君化
  • 貴族政 → 派閥による少数支配
  • 民主政 → 衆愚政治・無秩序

単一の体制では、権力が一部に集中しすぎることで腐敗や暴走が起こりやすくなるのです。

これに対して、『三つの体制をバランスよく組み合わせた「混合政体」』は、ある種の安全装置として機能します。

重要なのは、市民一人ひとりが「自分の果たすべき役割」を持っていることです。
つまり、誰もが政治に関与し、監視し、貢献できる構造がある限り、堕落の落とし穴にはまらない政治体制がつくれるということです。

2000年前からローマの哲人は知っていた 政治家を選ぶ方法 [ キケロ ]

<レビュー>
キケロは失敗した政治家でした。それであるがゆえ、政治というゲームの非常さをよく理解していました。そして、理想とする共和制においても、その主体である市民が政治的に成熟していなくてはなりません。市民が公に対する責任を忘れ、個人的利益のみを追求するような状態になると、民主政は衆愚政に堕落するので、市民を力で抑え込む必要が生じます。こうして、政治は独裁に傾いていく。この現象を最近では大統領化と呼んでいる。みなさんは、現在どこまで進んでいると思いますか。

2000年前からローマの哲人は知っていた 政治家を選ぶ方法 [ キケロ ]

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