2024年致知7月号
<己を克めて礼に復るを仁と為すより>
自らが平和であろうとしても、大事件や異変は起こり得る。
近年の大事件といえば、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻やパレスチナ自治区でのイスラエルとハマスの戦闘でも明らかである。いずれも我が国とは遠い国々ですが、台湾や尖閣諸島、沖縄までもが自国領土と主張する中国や、北方領土を軍事占拠しているロシアは隣国である。核開発を進める北朝鮮を含めて、これらの国々は戦狼外交で周辺国を脅かしています。国策を実現するために暴力や虚言(プロパガンダ)をもってすることは真の文明国とは言えません。孔子は「己の欲せざる所を人に施すことなかれ」と説き、周辺国から真に尊敬される文明の大国は「近き者悦び、遠き者来たる」と評しました。私共はいま、人間として「真に守るべき価値とは何か」ということを深慮し、戦争や自然災害の世を生きなければならない時を迎えているように思う。
<特集 師資相承より>
師資相承(ししそうしょう)とは、師から弟子へと道を次代に伝えること。
哲学者森信三師は、人間を形成する要素として三つを挙げている。「先天的素質」「逆境により試練」「師匠運」。とくに人格を形成するには師匠運がもっとも大事であり、どういう師匠に出会うかで、先の二つも影響されると述べています。「尊敬する人がいなくなった時に、その人の進歩は止まる。尊敬する対象がとしとともにはっきりするようでなければ、真の大成は期しがたい」終生、仰ぐ師を持ち、その教えを相承していく人生を歩みたいものである。
「紛れもない私を生き切れ」行徳哲男 松岡修造
デンマークで一番の嫌われもの
彼は大変敬虔なクリスチャンでしたが、月曜日から土曜日までぼんやり生きてこなかったか。だらだら生きていることは犯罪ではないが明らかな罪であると、教会の前で礼拝に来る人たちにビラを配る。日曜日になりノコノコと教会に来てアーメンを唱えるくらいならば、教会の礼拝は止めてしまいなさいと国教を攻撃した。彼の名は、セーレン・キェルケゴール。
最大の危機はアイデンティティクライシス
大事なのは存在であるが、今は存在が不鮮明である。我われ現代人は自分を生きていない。紛れもない私を生きているという証がない。現代の人間に襲いかかっている危機は資源の枯渇ではなく、人種問題でもない。一人ひとりの人間が自分を生ききっていないというアイデンティティクライシス以上の危機はないと思う。
弱さを知ることが本当の強さ
テニスを引退しようと思っていた時に、研修があると聞いて松岡さんは山に来ました。そこで自分自身の省みることができ、自分では変わったと思っていた。しかし、行徳さん曰く、実は変わったのではなく、本当の自分に返っただけという。その時はわからなかったことですが、「弱さ」を知ることで強くなれた。現代人は気負いだらけです。字の如く気に負けている状態を指しますが、だから弱さを知ることが大事なのです。
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