物理だけではなく、さまざまな学問に興味を抱き、大量に本を読み漁っていた少年は、「量子力学を自分のものにしてやろう」と決意。得た知識を他人に教えるのが好きだったこともあり、12歳でこの本を書いたそうですが、難易度は中間書という位置付けのとおり、入門書をある程度理解してから読むと非常に面白いかと思います。これほどの内容をよくまとめたことに感服です。
量子とは何か
量子とは「或る単位量の整数倍の値しかとらない量について、その単位量」などと定義されているが、本書ではほぼ厳密性を考慮していないため、量子をざっくりと「一定量を持った物理量※1の最小基準」、ようするに「最小単位のようなものである」と説明しています。この最小単位は極めて小さいという意味で、チリや埃のようなレベルではなく、原子や原子核、電子、陽子、中間子、光子、陽電子、ニュートリノなどのレベルです。
※1物理量とは、数値と単位のセットで表される量の総称
目に見えない極小の世界
目に見える私たちの世界はニュートン力学系の下で生活をしていますが、ミクロの世界では大きく異なります。例えば机の上のペンを落とせば床に落ちます。硬貨を投げれば、表が出る確率は2分の1、裏が出る確率も2分の1でどちらか一方の状態を必ずとります。ですが、ミクロの世界でペンを落としたとしても必ず落ちるとは限りません。空中で止まったり、突き抜けるかもしれない。コインの場合も表が出る確率は2分の1にはならず、表と裏の状態を同時にとることがあります。
分からないものは分からない世界
理科教育では「何故〜なのか?」を重視するが、量子力学の世界では急に現象が、「〜のようにうまくいく」と説明はするが、何故起こるのかという理由を説明できなくなってしまいます。しないのではなく、できないのです。そのため量子力学ではっきり確かだと言えるのは数式による記述だけなのです。分からないものは「分からない」として理解するしかないのです。これがマクロとミクロの世界の差なのです。
量子力学は常識がまったく通用しない不思議な世界です。たとえば、光は粒子だと思われていましたが、実験をすると波の性質ももっている。そのため、入門書では「光は波でもあり、粒子でもある」と説明していますが、本書は「波と粒子の性質を同時に備える新しい何か」ではないだろうかと説明しています。私は数式までは理解できていませんが、おもしろくて、ワクワクする内容です。たまには難解な本にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
<目次>
第0章 量子力学とは何か~最も基本的な事柄~
第1章 万物の根源~量子力学の誕生~
第2章 前期量子論~古典力学の破綻~
第3章 数学的定式化~量子論から量子力学へ~
第4章 内在的矛盾と解釈問題~量子力学は正しいか?~
第5章 量子力学の先へ~範囲拡大~
第6章 近未来的応用への道~量子力学の利用~