一度や二度の挫折や失敗で諦めず、巻き返せ

歴史・哲学の本

2024年致知11月号
<特集 命をみつめて生きるより>
釈迦は「この世においてどんな人にも成し遂げられない5つのこと」を明示している。
一は老いていく身でありながら老いない、ということ。
二は病む身でありながら病まない、ということ。
三は死する身でありながら死なない、ということ。
四は滅ぶべき身でありながら滅びない、ということ。
五は尽きるものでありながら尽きない、ということ。
命をみつめて生きるとは、この法則を見つめて生きることだとも言える。

「天意夕陽を重んじ、人間晩成を貴ぶ」
渋沢栄一が晩年、好んで揮毫した言葉で、一日を懸命に照らし続け、西の空を茜色に染めて沈んでゆく夕陽の美しさ。人間も年と共に人間として佳境に入り、晩年になるほど晴れわたっていく生き方が貴い、ということである。また、子孫のために遺した短歌には、
「ゆづりおく このまごころの ひとつをば 亡きからむのちの かたみともみよ」
自分はそれほど才能もなかったが、何事にもまごころを持って当たってきたから、人生、そんなに難しいことはなかった、と語っています。

重要なものは、道具ではなくコンセプトである。
ドラッカー学会共同代表理事 佐藤 等
組織をはじめとした物事の生成発展の源は人間力にあります。資力を道具に変えることはできますが、資力で人間力を養うことはできません。では、人間力を養うにはどうしたらよいのか。人間力は優れた人物を学ぶと共に、優れた書物を読まなければなりません。書物を通して人物を学ぶということは、言葉を通して教えを授かるということ。そして、言葉の中でもコンセプト(概念)には本質が凝縮されています。新しいコンセプトを獲得すると物事を見る視点が増え、世の中の見え方、世界観が変わります。コンセプトとは物事を見る「視点」だからです。これがコンセプトの重要な機能です。本質の把握が的を射ているほど行動の正しい方向性が示されるといえます。コンセプトは、本質的な活動に人を導き、人を動かすエネルギーをもっているのです。

二宮尊徳 「成田参籠と一円観開眼」
北 康利
四十歳になった金次郎の周辺に次々に問題が起こり始めていた。優秀だとされていた人間が挑戦しては何度も失敗していた財政再建を、農民出身の金次郎に成功されてはならない。新しく赴任してきた豊田正作は、金次郎がやることなすことすべてに難癖をつけてきた。金次郎は能力とやる気のある者なら入百姓だろうと公正に扱うことを示すつもりだったが、領内を二分する争いにまで発展。米の収穫量も半減し、金次郎が進めた木綿生産も行われなくなった。江戸藩邸に呼び出され藩庁も頼りにならないことがわかると、成田山に行き修行したいとお願いしました。照胤は金次郎の話ぶりから、精神的に相当参っていることを理解し、断食修行を勧めた。二一日間の断食修行を行うことで心が少しずつ修復され、これまでの失敗を反省し、どうすれば良いかを考え続けた。そこで悟ったとされるものに「一円観」がある。仏教の世界には自他合一という考え方がある。自分と他者も一体。天地はみな一体という教えです。考えてみれば、桜町仕法が自分の思い通りに行かないことを領民や豊田のせいにしてとがめもした。だから反発を受けた。自分が正しく相手に非があるという自分中心の考え方はすなわち「半円の見(半円観)」にすぎない。簡単に言えばプライドを捨て「己を捨てる」ことこそ、「一円の見(一円観)」だというわけだ。

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