学びって本当はすごく楽しいことのはずなのに、どうして学校の勉強はつまらないのだろう?人生は本来はすごくワクワクするもののはずなのに、どうしていつも不安を感じながら生きていかなければならないのだろう?次から次へと湧く疑問の答えをもとめて、行くあてもなく探求の旅に出るというストーリーです。著書は結論よりも、どんな探求をしたのかというプロセスを大事にしています。
成功するのに必要な「能力」とは
筆者はこれまで企業家としてたくさんのことにチャレンジをし、失敗も多く経験しました。それでも新しいことに挑戦していくと、たまに成功することがあり、「すごい才能だ」などと評価してくれます。ですが、そこで「成功するにはどういった能力が必要か?」と聞かれても答えられないのです。そもそも能力っていったいなんなんだろう?学校の教育についても同様です。人工知能を開発している会社に関わっていると、その発達のスピードには目をみはるばかりです。世の中はどんどんかわっているのに、教育の中身はさほど変わっているようにはみえません。
疑問の答えをもとめて
本書は主人公が「なぜ学校の勉強はつまらないのだろう」という素朴な問いから始まります。次第に頭の中が疑問でいっぱいになり、その疑問の答えを求めて探究の旅へ出発するというストーリーです。その問いに対して、たくさんの書籍の中から特に著者がインスピレーションを与えてくれた人たちの考えを多く紹介しています。それは、四百年前のボヘミヤの歴史学者で「近代教育の父」と言われたヨハン・アモス・コメニウスの「世界図絵」(1658)だったり、フランスの哲学者ミシェル・フーコーの「監獄の誕生」(1975)だったり、彼らが人生をかけて考え抜いたことは、疑問への答えとなるのですが、それでも問いへの探究は終わることがありません。
学校とはなんだ
オーストリアの哲学者イブァン・イリイチの「コンヴィヴィアリティのための道具」(1973)では、学校とは3つの目的が合体した場所だと説明しています。
1 ちゃんと食べていける労働者になるための技能訓練
2 社会の一員として規律を守る人間になるためのしつけ
3 良い人格を持つ立派な人間づくり
つまり、たまたまテストの成績が良かった、悪かったという話が、「成績が優秀な人のほうが、悪い人よりえらい」という上下関係につながりました。「学力が低い=頭が悪い=落ちこぼれ」だったり、「規律を守らない=態度が悪い=反抗的」となる原因は、学校が3つの目的が合体した場所だから起きるのです。そのため、このような考え方が社会全体に広がり、自分たちで考えることをやめ、専門家のつくった制度にどっぷり依存することになりました。
この本は、著者が影響を受けた本をたくさん紹介しており、それだけでも大変おもしろいです。学校を卒業すると学ぶことをやめてしまう人が多いですが、本来は自分が興味を持つことを、年齢に関係なくとことん探究すればよいのです。小さい時はなぜ?だらけで生きていますが、次第になぜ?と思わなくなり、安易に情報を鵜呑みにしてしまいます。学校で教わることやテレビもすべて正しくはありません。自分で疑問をもち、探求の旅にでましょう。
<目次>
第1章 解き放とう 学校ってなんだ?
第2章 秘密を解き明かそう なんで学校に行くんだっけ?
第3章 考えを口に出そう なぜ大人は勉強しろっていうの?
第4章 探究しよう 好きなことだけしてなぜいけないの?
第5章 学びほぐそう じゃあ、これからどうすればいいの?