ぐるぐる結論が出ない答えから、解決策を見つける思考法

知識が広がる本

今日の企業は、高度に複雑化している。だが、複雑なシステムの中でも、本当に重要なことはいくつもない。明晰な思考を妨げる最大の障害は、ものごとを複雑に考えすぎるということだ。「何が本当に重要か」を見極めることができれば、短期間に企業は著しいパフォーマンスの向上を達成することができる。本書は、ゴールドラット博士と娘エフラットとの会話を通じ、「ものごとは、そもそもシンプルである」「人はもともと善良である」という二つの信念の根本的なあり方を説明することで、あらためて深遠な思考に基づいたアプローチを提唱しています。

ザ・チョイス 複雑さに惑わされるな! [ エリヤフ・M.ゴールドラット ]

ボトルネックを改善し全体のパフォーマンスを改善
ゴールドラット博士はハードサイエンス(自然科学)のアプローチや手法が、社会科学にも応用できることを示すため、経営科学に着目しました。その結果、世界中で目覚ましい成果を出し続けるTOC(Theory of Constraints:制約理論)を開発。簡単に言えば、制約となっているボトルネック一点集中、管理することで全体のパフォーマンスを改善するとい理論です。「ザ・ゴール」に書かれていることを実行しただけで、業績が改善した工場が続出しましたが、さらに発展し、経営分野にとどまらず、組織や人間をよりよくする実践的な哲学、アプローチをまとめたのが本書です。

科学者と普通の人の違い
ある装置のプロトタイプを設計する科学者とその装置を使うだけの人との違いは何か。普通の人は中身のことはわからず、ただの箱にすぎない。だからその装置がうまく動かないとがっかりし、イライラする。しかし、科学者は違う。どうやって装置が動くのか、どんな仕組みになっているかもわかっている。そのため、どこが有効さえわかれば、うまくいかなかったことをがっかりしても、理解は深まります。要するにプロトタイプや新しい試みがうまくいかない時、選択肢は二つある。一つは結果に対して不平をブツブツもらす。もう一つは、何をどう修正しなければいけないのか、その原因と結果、つまり因果関係を理解し、新たな知識を獲得する。

科学者のものの見方
科学者はものの見方が普通の人と違う。では科学者はいったいどんなふうにものごとを観察しているのか。まずは何でもわかっていると思ってはいけない。自分には知らないことがたくさんあると謙虚でなければならないし、最初からうまくいくはずはないと思っている。もう一つは自信だ。ものごとがうまくいかなくても、必ず何かいい解決策、ソリューションを見つけることができるという自信をもっていなくてはならない。謙虚でありながら、自信を持つ「謙虚で尊大」が大事なのです。

ものごとをシンプルに考える
ほとんどの人は、ものごとは複雑であればあるほど凄いことだと思い込んでいます。そんなふうに考えていると、だんだん人は頭を使わなくなってしまうのです。複雑なソリューションだから、自分にはわからないと思い込んでしまう。そのため自分の取り巻く環境がどうなっているのか理解するには、複雑な知識がさらに必要だと思い込んでしまいます。どんな状況でも、その中身は実は極めてシンプルなんだということを受け入れることが鍵となります。

ぐるぐるする思考、トートロジーだらけ
愛だの憎しみだの、それから動機や知性も、心理学が扱うものすべては理論的にしかその存在は確認できません。実際に目や手で確認したものは一つもない。その抽象的なものは注意していないと、ロジックが同じところをぐるぐると循環してしまうのです。例えば「彼らは、勝とうという十分なモチベーションがなかったから試合に負けた」という記事があった場合、十分なモチベーションがなかったという証拠については、ふつうの記事では触れることはない。あえて証拠を求めたとしたら、「だって、試合に負けたじゃないか」という答えが返ってくるに違いない。こうなると議論が循環して明晰な思考はできなくなる。同じところをぐるぐるするだけで、根本的な原因には辿り着けなくなってしまうのです。

トートロジーから抜けるには
例えば「市場の思考が変わったから、この商品の売り上げが減った」と言ったとすると、このままでは典型的なトートロジーとなる。なぜなら他にもいくらでも理由はある。景気が悪くなったとか、競合商品が出てきたとか、サービスが悪くなったとか、値上げしたとか。売り上げが減ったという情報だけでは本当の理由はわからない。しかし、これにもう一つの別の結果の存在が確認できたとする。「この商品の売り上げが減った分、代替商品の売り上げが増えた」この場合は、原因の原因まではわからないが、市場の思考が変わったという理由になる。ロジックが循環していると、ある結果の原因を突き詰めようとしても、確認はできない。根拠をはっきりとさせるには、少なくとも、もう一つ何かの別の結果が必要になるのです。

<目次>
二つの選択肢
ゴールドラット・レポート あらためて、常識とは何か
なぜ、当たり前のことができないのか
ものごとは、そもそもシンプルである
矛盾と対立
信念を行動に
調和
ゴールドラット・レポート 決して、わかったつもりになるな
ウィンーウィン
機会はいくらでもある
ゴールドラット・レポート 販売期間の短い製品
限界なき可能性
明晰な思考とトートロジー
ゴールドラット・レポート コンフォートゾーン(Part1)
人はもともと善良である
ゴールドラット・レポート コンフォートゾーン(Part2)
感情、直感、そしてロジック
フリーダム・オブ・チョイス

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